Ray Samuels Audio SR-71A と P-51

知る人ぞ知る海外(米国)メーカーRSAのポータブルヘッドホンアンプ(以下PHPA)、SR-71AとP-51。日本国内には代理店が無いので、入手するには個人輸入か並行輸入品を扱う国内販売店、あるいはオークション等を利用するしかないというちょっと厄介な製品。私の場合、SR-71Aはヤフオクで入手し、P-51は円高の恩恵に預かろうとRayさんにメールで注文してみました。そのときの経緯を少し紹介してみます。まず、下記のような内容でGメールで送信。
I want the Emmeline “P-51 Mustang” Portable Headphone Amp.
Please teach me total cost.
Method of payment:PayPal
住所も米国式で記載
文法的に合ってるかどうかも分からない英語ですが、コレだけでRayさんは理解してくれたみたいです。次の日、下記のような返信をもらいました。
$375.00 for the black P-51, $48.00 for shipping & 4.2% pay-pal fee.
Total shipped is $440.76
You may use my e-mail address to transfer the money.
rsaudio@raysamuelsaudio.com
We claim the amp as refurbished valued at $45.00 only.
Cheers.
Ray Samuels
トータルで440.76ドル支払えば良いみたいなので、PayPalでRayさんのアドレス宛に送金してみました。PayPalではその時の為替レートで日本円に換算してくれるので(もちろん手数料も含まれているだろうが)、36,909円で購入できました。1ドル83円73銭換算。国内では同じP-51の並行輸入品が5万近くで売られていたりするので、できることなら直接Rayさんにオーダーしたほうが早くて安く済むと思います。当方東京在住ですが、送金後何の音沙汰もなく4日目に届きました。
さて、このPHPA、何がそんなに嬉しいのかと疑問に思う人も多いはず。具体的に言えば、iPodとイヤホンの間にコイツを介すだけで、音に厚みと立体感、艶が生まれます。DSPほどの効果を感じることはできませんが、iPod等のDAPから直で聴く音色とは趣が異なります。最近は様々なPHPAが販売されているので、選ぶにも一苦労です。それぞれに音の出方に個性があるので、自分好みのPHPAに出会うことができるのは難しくもあります。故に、こういった製品を購入する際には、レビューや試聴が欠かせません。試聴できる環境も一握りの店舗だけなので、レビューだけ見て購入に踏み切るパターンが多いことだと思います。とりあえず、私の購入したSR-71AとP-51についてもレビューしてみたいと思います。

まず、SR-71Aについては、9V乾電池で駆動させるので、リチャージブルタイプのモノを使用するか、アルカリかマンガンかで悩むところではあります。また、電池の違いが音にも影響するので困ったモノです。リチャージブルタイプは日本では販売されていないので、手っ取り早いのはコンビニで売っているパナソニックのアルカリとかになるでしょうか。一応、パナのアルカリとマクセルのマンガンを聞き比べてみましたが、アルカリのほうが若干低域のパワー感が勝るようです。駆動時間も60時間くらいと長いので私はアルカリを使用しています。対してP-51は充電式で50時間は駆動できるので、その点苦労する必要はなさそうです。
音については、両方とも同じメーカーだな、と感じさせるほどに鳴り方はかなり似ています。音に立体感があり、楽器の前後関係・奥行き感が明確になります。ボーカルはそうでもないですが、ギターの音には明らかに艶が乗るのが分かります。特にMarshall等の真空管アンプから発せられる、倍音豊かでマイルド且つ激しいディストーションサウンドの味付け具合はかなり良い感じです。図太いサウンドが多少弾むように奏でられるので、なかなか心躍らされます。又、コーラスのかかったサウンドは、その艶やかさがより強調される感じ。アコースティックからディストーションサウンドまで、ギターの音色を表現するのは得意なようです。原音に忠実という聴かせ方ではありませんが、私の中ではこれぞRSAサウンドとなっています。個人的にギタリストということもあり、ギターの音を追ってしまうことが多いので、特に違いを感じるのかもしれません。鳴り方については、独特なグルーブ感があるので、ノリ良く、聴いていてとても気持ち良いサウンドです。
解像感については、これまたSR-71Aは優秀です。キッチリ分離させるというワケではありませんが、全域に渡りその程良い分離加減・輪郭の鮮明さは心地良いリスニングをもたらしてくれます。対してP-51は低域の分離感が乏しいものの、音圧があるのでそれとのトレードオフかなといった印象を受けます。
で、両者で一番の違いは音場の表現方法ではないでしょうか。SR-71Aがそこそこキャパのあるクラシックコンサートホールだとすれば、P-51は巷のライブハウス・ジャズバーといったところかもしれません。どちらも濃くて密度感のある空間ですが、SR-71Aは左右の広がり方が自然で、圧迫感無く、奥行き方向も自然に広がっているのが感じ取れます。総じて広い音場と言えます。対してP-51の音場は、左右の広がりはあまり感じられません、狭く、音も近いです。特に、パンを完全にLRに振っている楽器は音が近い。10時とか2時方向に振られている楽器は、そこそこ遠く感じます。ただ、それもある程度広がってはいますが、あるところでスパッと切られてしまい、その先を感じることができません。狭いと感じる所以です。又、エージング100時間(フル充電2回目)くらいで感じたことですが、前方10時2時方向の空間がスッポリと無くなり、妙な空間が作られる時期がありました。エージングが進むと、そのスッポリ空いた空間が徐々に繋がっていきましたが、十分なエージングが済んだ今でもその名残のような空間が目の前に佇んでいます。同じことを何度も言うようですが、P-51は空間の繋がり方が独特で、Left・Center・Rightに振られた音の空間が強く、そのの空間の音はちょっと弱い感じです。この様に独特で、狭く圧迫感のある音場と感じながらも、ある程度の空間の中に立体感のある音像を感じ取れるので、逆に?ライブ感のある差し迫る臨場感を楽しめてしまうのが素晴らしくも不思議なPHPAです。ロックを聴いていて、ボーカルとギターの存在感には圧倒されるものがありますね。
帯域バランスにも両者の違いが見られます。SR-71Aは全帯域に渡りフラット志向で高低ともに伸び良い感じ。綺麗な高音と量感のある締まりある低音、中域の情報量もシッカリしており、とても優秀なバランスです。どんなジャンルでも音楽的に聴かせてくれます。対して、P-51は中低域の押し出しが強く、高域はSR-71Aより僅かに控え目、伸び良く気持ち良いという感じではありませんが、シッカリした音を聴かしてくれるので歯切れ良さが出ています。
HR/HMをこよなく愛する私としては、ライブの臨場感を味わえるP-51の音は個性的でハマります。対して、洋楽Pops・女性ボーカルモノはSR-71Aのほうが広い音場で綺麗に気持ちよく聴かせてくれますね。
スポンサーサイト